健康経営優良法人は採用に効くのか?──データが示す若手求職者の本音【医師が解説】

「健康経営優良法人を取れば採用に有利」——支援会社の営業トークでよく聞く言葉ですが、これは半分正しく、半分言い過ぎです。実際のデータを見ると、若い世代の反応はもう少し複雑で、そして中小企業にとってはむしろ好都合な構造をしています。この記事では、公的な調査データをもとに、認定が採用にどう効くのか・効かないのかを正直に整理します。

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制度名の認知は、まだ道半ばです

健康経営優良法人認定事務局が就活生・転職者900人を対象に行った調査(2023年)では、健康経営®を見聞きしたことがある人は全体で48.8%でした。就労経験のある20代転職者(79人)では62.0%で、言葉の内容まで分かると答えた人も48.1%と高い一方、就職前の学生層への浸透はまだ途上です。つまり、「求人票の認定マークを全員が探している」という状況ではありません。ここを過大に語る営業トークは、データと合っていません。

※「健康経営®」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。

ところが、中身を知ると評価は一変します

同じ調査で「健康経営が就職先の決め手になるか」を聞くと、「最も重要な決め手になる」8.4%、「重要な決め手の一つになる」52.0%で、合計60.4%。20代転職者に限れば74.7%に達します。さらに、認定制度を知っている人(204人)に限ると、認定企業で「働きたい」と答えた人は77.0%にのぼり、ほかに16.2%は勤務先がすでに認定を取得していました。制度名の認知は途上でも、「従業員の健康や働き方を大切にする会社」という中身には、若い世代は極めて強く反応する——これがデータの示す構造です。

若い世代が実際に見ているもの

日本財団が17〜19歳の1,000人に行った調査(2025年)では、企業選びで重視する項目は「給与や待遇」52.6%、「福利厚生の充実」35.7%、「希望する業界」33.2%、「ワークライフバランス」31.0%、「残業が少ない」20.8%、「ハラスメント対策」15.0%の順でした。給与は別として、2位以下の項目はいずれも健康経営の取り組み内容と大きく重なります。認定事務局の調査でも、「働く環境に望むもの」の1位は「心身の健康を保ちながら働ける」で、人間関係の良好さを上回りました。

認定は「魔法のマーク」ではなく「知らない会社への安心材料」

ここまでを整理すると、認定の採用効果の正体が見えてきます。知名度のある大企業は社名自体が信用ですが、地方の中小企業を見た求職者には判断材料がありません。「この会社、大丈夫だろうか?」——その不安に対して、第三者の認定という形で「従業員を大切にしている」ことを示せるのが認定の価値です。応募を直接増やす魔法ではなく、知らない会社への安心材料。だからこそ、知名度で勝負しにくい中小企業ほど効果が大きいのです。

取っただけでは伝わりません──採用ページでの使い方

もう1つ、データから導かれる実務上の結論があります。制度名の認知が途上である以上、ロゴを載せるだけでは若い応募者に意味が伝わりません。採用ページには、認定ロゴとあわせて「なぜ健康経営に取り組むのか」と「具体的に何をしているのか」——健診後のフォロー、メンタルヘルスの相談先、医師による支援体制、残業対策、休暇の取りやすさ——を言葉で書くことが必要です。求職者が見ているのは中身であり、認定はその中身を信じてもらうための裏付けです。

まとめ──認定取得と「伝わる形」はセットで

健康経営優良法人は、正しく使えば中小企業の採用における確かな安心材料になります。当社の健康経営支援サービスでは、認定の取得支援だけでなく、取得後に採用ページでどう伝えるかまでご助言しています。健康経営が初めての会社でも、まず現状の棚卸しからご一緒します。

※出典:健康経営優良法人認定事務局「就活生・転職者に関する調査」(2023年8〜9月・900人・日経リサーチ協力)、日本財団「18歳意識調査 第68回 就職・仕事観」(2025年3月・1,000人)。数値は公表資料に基づきます。


ハートコミット合同会社(兵庫県明石市)は、精神保健指定医・産業医である代表医師が、健康経営優良法人の取得伴走支援を行います。取得した認定を採用と定着に活かすところまで、伴走します。

執筆・監修:黒田 優(精神保健指定医・産業医・総合内科専門医・循環器専門医)

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