健康経営優良法人とは?中小企業が取得するメリット・費用・進め方【医師が解説】

「健康経営」という言葉を、取引先からの調査票や金融機関との会話で目にする機会が増えていないでしょうか。2026年3月には「健康経営優良法人」の認定企業が全国で2万6千社を超え、もはや大企業だけの取り組みではなくなっています。一方で、中小企業全体から見れば取得済みはごく一部——つまり、いま取得すれば地域や業界の中ではっきりと目立てる段階です。この記事では、健康経営優良法人の制度の仕組み、中小企業が取得するメリット、費用、そして取得までの進め方を、産業医の立場から解説します。

目次

「健康経営」とは──国が推進する経営手法

健康経営®とは、従業員の健康管理を単なる福利厚生ではなく経営課題としてとらえ、戦略的に取り組む経営手法のことです。経済産業省が制度設計を主導しており、従業員の健康への投資が、生産性の向上や組織の活性化、ひいては企業価値の向上につながるという考え方に立っています。

※「健康経営®」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。

「健康経営優良法人」とは──中小企業ではまだ1%未満

健康経営優良法人認定制度は、優れた健康経営を実践する企業を「見える化」する顕彰制度で、経済産業省が設計し、日本健康会議が認定します。企業規模と業種により「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」に分かれ、2026年3月の発表では大規模法人部門3,765法人、中小規模法人部門23,085法人が認定されました。

数字だけ見ると多く感じますが、日本の中小企業は300万社を超えます。中小規模法人部門の認定23,085社は全体の1%に届きません。大企業では「取っていて当たり前」に近づいているのに対し、中小企業ではまだ十分に希少な称号——ここに、いま取り組む価値があります。

中小企業が取得する3つのメリット

1つ目は採用です。求人票や自社サイトに認定ロゴを掲載でき、「従業員を大切にする会社」であることの客観的な証明になります。給与や知名度で大手と勝負しにくい中小企業にとって、働きやすさを目に見える形で示せる数少ない手段です。

2つ目は取引と信用です。大手企業が取引先・協力会社に労務管理や健康管理の体制を求める流れが強まっており、認定が取引継続や新規取引の評価材料になる場面が増えています。自治体の入札加点や金融機関の優遇制度の対象となる場合もあります。

3つ目は、従業員の健康リスクそのものへの備えです。少人数の会社ほど、1人の長期離脱が事業に与える打撃は大きくなります。健診の結果を放置しない仕組みやメンタルヘルスの相談先を整えることは、認定のためというより、会社を守るための投資です。

費用はどれくらいかかるのか

認定の申請料は、中小規模法人部門で1件15,000円(税別)です(健康経営優良法人2027の場合。金額は年度ごとに公表されます)。申請の前提となる協会けんぽの「健康宣言」への参加には、費用はかかりません。費用の中心は申請料ではなく、要件を満たすための取り組み側に発生します——定期健康診断の全員受診、ストレスチェックの実施、産業保健の専門職への相談体制などです。外部の支援サービスを利用する場合の費用は支援範囲によって幅がありますが、書類作成の支援だけでなく、健診後の医師の意見や医師面接といった「医師にしかできない業務」まで含めて誰が担うのかを確認することが、比較のいちばんのポイントです。

取得までの流れ──健康宣言から認定まで

中小規模法人部門の大まかな流れは次のとおりです。①加入している保険者(協会けんぽ等)の「健康宣言」事業にエントリーし、②受動喫煙対策などの必須項目と、健診受診率(実質100%)・受診勧奨・50人未満事業場のストレスチェックといった選択項目を整え、③施策を実施して記録を残し、④夏から秋の申請期間に申請します。認定の発表は翌年3月頃です。参考として、健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)の申請期間は、2026年8月17日から10月16日までです。この日を過ぎた場合は、次回(例年8月頃に受付開始)に向けた準備になります。施策の実施実績が必要になるため、申請の半年から1年前に動き始めるのが現実的なスケジュールです。

※申請期間・認定要件は年度ごとに更新されます。最新の情報は経済産業省および健康経営優良法人認定事務局の公表資料でご確認ください。

2028年のストレスチェック義務化と「一石二鳥」で進める

従業員50人未満の事業場にも、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務付けられることが確定しています(令和8年政令第195号・2026年6月10日公布)。ここで注目したいのは、ストレスチェックの実施は健康経営優良法人の評価項目でもあるという点です。つまり、いずれ避けられない義務化対応を一歩だけ広げれば、健康経営の認定要件のかなりの部分が同時に整います。「どうせやる法令対応を、認定という看板付きで前向きに進める」——これが、50人未満の会社にとって最も無駄のない進め方だと考えています。ストレスチェック義務化への準備についてはこちらのページで詳しく解説しています。

まとめ──まず現状の棚卸しから

健康経営優良法人は、中小企業にとってまだ希少で、採用・取引・社内の健康リスク対策のすべてに効く認定です。最初の一歩は大がかりな施策ではなく、健診の受診状況とストレスチェックの実施状況を確認する「現状の棚卸し」です。当社では、認定要件と貴社の現状を突き合わせる着手前診断から、健康宣言、施策づくり、申請前の内容確認まで医師が伴走する健康経営支援サービスをご提供しています。


ハートコミット合同会社(兵庫県明石市)は、精神保健指定医・産業医である代表医師が、健康経営優良法人の取得伴走支援を行います(認定申請は企業ご自身で行っていただきます)。健診事後措置やストレスチェック、医師面接などの医師業務も、必要に応じて別途一体的に対応します。認定の見込みは着手前診断で率直にお伝えする方針です。

執筆・監修:黒田 優(精神保健指定医・産業医・総合内科専門医・循環器専門医)

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