別の記事では、必要なときだけ医師に依頼するスポット産業医を紹介しました。では、月額制の顧問契約(メンタルヘルス顧問医)とはどう使い分ければよいのでしょうか。両者の違いと、切り替えの目安を整理します。
スポットと顧問の違い
スポットは「案件が起きてから医師を探して依頼する」方式、顧問は「あらかじめ関係を持っておき、起きたらすぐ相談する」方式です。費用面では、単発の案件が年1〜2回ならスポットが安く、年に何度も相談ごとが発生するなら顧問の方が総額は下がります。ただ、違いは費用だけではありません。
顧問医を持つ4つのメリット
1. 初動が速くなる
メンタルヘルス対応は初動の速さが結果を左右します。スポットの場合、医師探し・問い合わせ・契約という手順に1〜2週間かかることがありますが、顧問医がいれば当日〜数日で相談できます。不調の早期にひと声かけられるかどうかで、休職に至るか踏みとどまれるかが分かれることは珍しくありません。
2. 会社の事情を知ったうえでの助言になる
顧問医は、業務内容・職場の人間関係・過去の対応履歴を踏まえて助言できます。単発の依頼では毎回ゼロから状況を説明する必要があり、説明の手間だけでなく、判断の精度にも差が出ます。特に復職支援は数か月にわたる経過を同じ医師が追い続けることに意味があります。
3. 「相談していいか迷う」案件を拾える
スポットでは、費用が発生するため「これは医師に聞くほどのことか」と相談をためらいがちです。顧問契約では月額の範囲で気軽に相談できるため、深刻化する前の小さな相談──「最近ミスが増えた社員がいる」「健診結果のこの数値は働かせて大丈夫か」──が医師に届くようになります。
4. 従業員・取引先への安心材料になる
「相談できる医師がいる会社」であることは、従業員の安心感と採用面のアピールになり、労務トラブルの予防にもつながります。
切り替えの目安
次のいずれかに当てはまるなら、顧問契約を検討する時期です。
- スポット依頼が年3回以上発生した(発生しそう)
- 休職者の復職後フォローなど、継続的な関与が必要な案件を抱えている
- 従業員が30名を超え、健診事後措置・ストレスチェックなど定常的な産業保健業務が増えてきた
- 2028年4月のストレスチェック義務化(50人未満への拡大)への備えを始めたい
逆に、案件が単発で完結する見込みなら、無理に顧問契約にする必要はありません。当社でも、まずスポットで対応し、継続の必要が見えた段階で顧問契約をご案内する順序を基本にしています。
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執筆・監修:黒田 優(精神保健指定医・産業医・総合内科専門医・循環器専門医)。17社の企業・団体の産業医として、メンタルヘルス対応から健診事後措置まで支援しています。

