健康診断で「要精密検査」を放置する社員への対応|企業の義務と実務

健康診断の結果「要精密検査」や「要治療」と判定されたのに、病院に行かないまま放置している社員——どの会社にも必ずいます。本人の自由に見えて、実は企業側にも無関係ではいられない問題です。

精密検査の受診は原則本人の判断ですが、企業には受診勧奨と、医師の意見をふまえた就業上の措置が求められます。「知っていたのに何もしなかった」が最も危険です。

なぜ放置が企業のリスクになるのか

企業には従業員の生命・健康を守る安全配慮義務があります。健診で異常所見を把握していたのに何の対応もせず、その後に脳・心臓疾患などで倒れた場合、「会社は把握していたのに放置した」と評価されるおそれがあります。特に高血圧・血糖・脂質など、過労死等と関連の深い項目の放置は要注意です。

企業がやるべきこと1:受診勧奨

まずは本人への受診勧奨です。ポイントは、健診直後の一度きりで終わらせないこと。時期を変えて繰り返し勧奨し、その記録を残すことで、本人の健康にも、会社の安全配慮義務の履行にも意味が生まれます。文書やメールなど、形の残る方法がおすすめです。

企業がやるべきこと2:医師の意見聴取と就業上の措置

精密検査を受ける・受けないにかかわらず、異常所見のある健診結果については3か月以内に医師(通常は産業医)から意見を聴く義務があります。産業医は健診結果そのものから、通常勤務でよいか、残業制限などの就業制限が必要か、意見を出せます。本人が病院に行かなくても、会社としての対応は前に進められるということです。

知っておきたい制度:二次健康診断等給付

血圧・血中脂質・血糖・肥満の4項目すべてに異常所見があった場合、労災保険の「二次健康診断等給付」により、本人負担なしで二次健診と特定保健指導を受けられます。すでに脳・心臓疾患の症状がある方は対象外で、受けられるのは年度に1回、指定の医療機関に限られます。検査の内容は脳・心臓疾患の予防に関するもので、便潜血や胸部X線などの精密検査は対象になりません。対象になる社員には、「お金がかかるから行かない」への後押しになります。

声かけの工夫

  • 「会社として心配している」というトーンで伝える(責めない)
  • 受診しやすい配慮(就業時間内の受診を認める等)をセットで示す
  • 産業医面談を挟み、医師から直接受診の必要性を説明してもらう

医師からの一言は、人事からの十度の案内より効くことがあります。当社でも、受診勧奨のための短時間面談を多くお受けしています。

安全衛生委員会で社員向けに使える講話資料「大腸がん検診(便潜血検査)陽性を「放置しないで」と伝える理由」も公開しています。

健診後の受診勧奨や医師の意見聴取(健診結果の就業判定)でお悩みの企業様は、こちらからお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

この記事について

執筆:ハートコミット合同会社 代表医師(産業医/総合内科専門医・循環器専門医・精神保健指定医)
最終更新:2026年10月

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※本記事の内容は一般的な情報です。個別の状況により取扱いが異なる場合がありますので、具体的な対応は契約先の産業医や所轄の労働基準監督署などにご確認ください。

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