時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積がある従業員から申出があれば、医師による面接指導を行う。多くの会社がこの手続きを知っていますが、「何のために行うのか」まで意識している会社は多くありません。面接指導の目的は、脳・心臓疾患の予防です。循環器専門医の立場から、形式的な面談で終わらせないための考え方を書きます。
なぜ「脳・心臓疾患」なのか
長時間労働と脳卒中や心筋梗塞の発症との関連は、労災認定基準にも反映されています。発症前1か月におおむね100時間、または2〜6か月にわたって月平均80時間を超える時間外労働があると、業務との関連が強いと評価されます。面接指導の80時間という基準は、この認定基準と重なっています。つまり面接指導は、疲労の確認だけで終える場ではなく、心血管イベントの手前にいる人を見つけて手を打つ場です。
面接指導で医師が本来見るべきこと
- 心血管リスクの土台:血圧、脂質、血糖、喫煙、肥満。直近の健診結果と面談時の血圧で評価します。
- 睡眠:睡眠時間と質。いびきや日中の強い眠気があれば、睡眠時無呼吸の可能性も考えます。
- 自覚症状:胸の圧迫感、動悸、労作時の息切れ、頭痛。見逃してはいけないサインです。
- メンタル面:長時間労働は抑うつとも関連します。心臓だけを見て終わらないことも重要です。
この評価をもとに、就業上の措置(時間外労働の制限、深夜業の回避、受診勧奨など)を意見として事業者に返します。血圧が高度に高い、胸部症状がある、といった場合は、就業制限とあわせて速やかな受診を勧めます。
形式的な面談になりやすい理由
面接指導が形骸化する典型は、問診票の確認だけで終わり、「特に問題なし」の意見が繰り返されるパターンです。原因の一つは、心血管リスクの評価が面談の中に組み込まれていないことにあります。血圧や脂質の数値をどう解釈し、どこから就業制限を提案すべきかは、循環器の診療経験があると判断が速く、根拠も明確になります。
会社側ができること
- 80時間を超えた従業員本人に、超えた時間を速やかに通知し、申出を促す(一般の労働者は、申出がなければ面接指導は行われません。研究開発業務などは月100時間超で申出がなくても義務です)
- 面接指導の際に、直近の健康診断結果を医師に渡す
- 医師の意見を受け取ったら、措置の内容を本人に説明し、記録を残す
- 同じ人が繰り返し対象になっている場合は、業務量そのものを見直す
循環器専門医による面接指導
当社では、長時間労働者の面接指導を循環器専門医である代表医師が行い、心血管リスクの評価と就業上の意見を法令の趣旨に沿ってお返しします。オンラインで実施できるため、産業医のいない事業場や遠方の企業様からも1名からご依頼いただけます。
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執筆・監修:黒田 優(精神保健指定医・産業医・総合内科専門医・循環器専門医)。17社の企業・団体の産業医として、メンタルヘルス対応から健診事後措置まで支援しています。

