ペースメーカー・ICDを装着した従業員の就業判定|職場環境・運転・高所作業

ペースメーカー・ICD装着者の就業判定 職場環境・運転・高所作業の考え方

ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)を装着した従業員がいる場合、会社は何に注意すべきか。人事から受ける質問で最も多いのは「今の職場で働いて大丈夫か」「どの業務を外すべきか」の二つです。循環器専門医として、判断の枠組みを示します。

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ペースメーカーとICDは目的が違う

ペースメーカーは脈が遅すぎる状態を補う装置で、装着後の生活制限は比較的少なく、多くの人が通常の仕事に戻ります。ICDは致死的な不整脈が起きたときに電気ショックで止める装置です。すでに重い不整脈を起こした方に植え込む場合(二次予防)と、心機能の低下などから今後のリスクが高い方に植え込む場合(一次予防)があります。ICDの場合は、装置そのものよりも「意識を失う可能性のある不整脈が起こりうる」ことが就業判定の中心になります。

職場環境:電磁干渉の考え方

一般的な事務機器やパソコンは、通常の使い方であれば問題になりません。携帯電話は、植込み部位から15cm以上離して使うことが勧められています。注意が必要なのは、強い電磁界や磁界を発生させる設備です。日本不整脈心電学会のステートメント(2026年2月運用開始)は、アーク溶接機、誘導型溶鉱炉、発電・変電施設など強い電磁波を出す設備の付近には立ち入らないこととしています。大型モーターや強力な磁石を扱う工程などでは、装置のメーカーや主治医に業務内容を伝えて、距離や作業方法の指示を受けます。人事だけで判断せず、具体的な設備名を挙げて医師に確認することが実務上の要点です。

運転業務

ICD装着者の自動車運転には、植込み後や作動後に一定期間の制限があります。日本不整脈心電学会のステートメント(2026年2月運用開始)が示す期間は、新規の植込みでは二次予防で6か月、一次予防で7日、ICDが適切に作動した後は3か月、本体やリードの交換後は7日です。運転の再開にあたっては、医師の診断書を公安委員会へ提出する手続きがあります。私的な運転と業務としての運転では扱いが異なり、人や物の輸送を仕事とする職業運転は、免許の区分を問わず認められていません。営業などで社用車を運転する業務は、主治医の評価と学会のステートメントに沿って、産業医が可否と見直し時期を意見書に示します。ペースメーカーのみの場合は、原因となった不整脈の状態が安定していれば、運転を制限しないことが一般的です。

高所・単独・夜間の作業

意識消失が起きたときに転落や重大事故につながる業務(高所、機械操作、夜間の単独作業)は、ICD装着者では慎重に判断します。装置が適切に作動した既往がある、失神の既往がある、といった場合は、当面の間その業務を外し、安定した状態が続いた段階で見直します。ペースメーカー装着者では、こうした制限を要しないことが多いです。

周囲への周知とプライバシー

緊急時の対応(AEDの使用は装着者にも行えます)を考えると、職場の一部に状況を共有しておくことが本人の安全につながります。一方で、病気の情報は本人の同意なく広げてはいけません。誰に、何を、どこまで伝えるかを本人と決め、記録しておくのが現実的な対応です。

循環器専門医による就業判定

植込み型デバイスの就業判定は、装置の特性と背景にある不整脈、職場の設備、業務の危険性を総合して行います。当社では循環器専門医である代表医師が本人と面談し、必要に応じて主治医と連携して、業務ごとの可否と見直し時期を意見書にします。全国の企業様からオンラインでご依頼いただけます。

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参考:日本不整脈心電学会「植込み型および着用型心臓電気デバイス装着患者の社会復帰・就学・就労に関するステートメント」(2026年2月運用開始)


執筆・監修:黒田 優(精神保健指定医・産業医・総合内科専門医・循環器専門医)。17社の企業・団体の産業医として、メンタルヘルス対応から健診事後措置まで支援しています。

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