心筋梗塞で入院した社員が退院してきた。心不全の治療を続けながら働きたいと言っている。治療と仕事の両立支援は、2026年度から事業主の努力義務になりました(改正労働施策総合推進法)。会社が何をすべきかは、厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)に整理されており、心疾患についての留意事項も示されています。循環器専門医の産業医として、実務の流れと役割分担を解説します。
両立支援は「本人の申出」から始まる
両立支援は、本人が支援を希望して申し出ることが出発点です。会社が病気を理由に一方的に配慮を決めるものではありません。申出があったら、業務内容や勤務条件をまとめた「勤務情報提供書」を会社が本人と一緒に作成し、本人から主治医に渡して、就業に関する意見をもらいます。主治医が業務内容を知らないまま書いた診断書では、両立支援の材料になりません。
心疾患ならではの配慮点
- 身体負荷:心筋梗塞後や心不全では、重量物の取り扱いや強い身体負荷のある業務を段階的に戻します。心臓リハビリテーションの進み具合が目安になります。
- 勤務時間:復帰直後は短時間勤務や残業制限から始め、体調を見ながら通常勤務に戻します。
- 通院と服薬:定期的な通院時間の確保と、服薬の継続。抗凝固薬を飲んでいる場合は、けがの多い業務で出血リスクに注意します。
- 症状の再燃:胸痛や息切れ、むくみの増加は増悪のサインです。本人が申し出やすい環境と、申出があったときの対応手順を決めておきます。
主治医・産業医・会社の役割
主治医は病状と治療方針を示し、産業医は病状と業務を照らし合わせて就業上の意見を出し、会社はそれらを踏まえて「両立支援プラン」を作成します。プランには、勤務時間・業務内容・配慮事項・見直し時期を書きます。産業医がいない事業場では、地域産業保健センターやスポット契約の産業医がこの役割を担います。
よくあるつまずき
一つは、配慮を「永久」にしてしまうこと。心疾患の多くは治療で安定するため、配慮は見直し時期を決めて段階的に解除します。もう一つは、本人の希望と医学的判断のずれです。本人は早く通常勤務に戻りたい、主治医はまだ制限が必要、というときに、産業医が両者の間に立って現実的な落としどころを示す役割を果たします。
循環器専門医が両立支援に関わる意味
心疾患の両立支援では、治療内容を理解したうえで業務との折り合いを付ける判断が求められます。当社では循環器専門医である代表医師が、本人との面談、主治医との連携、両立支援プランの作成支援までを一貫して担当します。復職後のフォロー面談を含む3か月程度の継続対応も、オンラインで全国からご依頼いただけます。
全国対応のオンライン産業医はこちら/スポット対応の料金はこちら/お問い合わせはこちら
職場で心筋梗塞や心停止が起きたときの初動は、安全衛生委員会向けの講話資料「職場の救急対応(急病編)」にまとめています。
執筆・監修:黒田 優(精神保健指定医・産業医・総合内科専門医・循環器専門医)。17社の企業・団体の産業医として、メンタルヘルス対応から健診事後措置まで支援しています。

