労基署から「健診後の医師の意見聴取」を指導されたら──50人未満の会社がやること【産業医が解説】

毎年9月は、厚生労働省の「職場の健康診断実施強化月間」です。この時期に労働基準監督署の調査や自主点検をきっかけに、「健康診断の結果について、医師の意見を聴いていない」と指導を受ける会社があります。

この記事では、指導を受けた50人未満の会社が、次に何をすればよいかを順に説明します。

目次

この記事の結論

  • 健診後の医師の意見聴取は、会社の規模にかかわらず事業者の義務です(労働安全衛生法66条の4)。
  • 対象は、健診で異常の所見があった従業員です。期限は健診の実施日から3か月以内です。
  • 依頼する医師を決めておけば、翌年からは毎年の手順として回せます。

何を指導されたのか

労働安全衛生法66条の4は、健康診断で異常の所見があると診断された従業員について、健康を保つために必要な措置を医師から聴くことを事業者に義務付けています。

具体的な決まりは、労働安全衛生規則51条の2にあります。

  • 健康診断の実施日から3か月以内に意見を聴くこと
  • 聴いた意見を健康診断個人票に記載すること

医師の意見は、一般に「通常勤務」「就業制限」「要休業」の区分と、必要な措置の内容で示されます。

この義務は、産業医の選任義務がない50人未満の事業場にもあります。労働基準監督署の調査で、個人票の「医師の意見」欄が空いていると指摘されるのは、このためです。

罰則はないのに、なぜ指導されるのか

労働安全衛生法には罰金の定めがあり、健康診断を受けさせないこと、結果を記録しないこと、本人に結果を知らせないことが対象になっています。一方、医師の意見聴取を怠ったこと自体には、罰則の規定がありません。

それでも指導を受けるのは、法律上の義務であることに変わりがないからです。指導を受けた場合は、改善して報告することが求められます。

また、有所見の従業員を医師の意見を聴かずに働かせ続け、その後に健康を損なった場合には、会社の安全配慮義務(労働契約法5条)が問われる可能性があります。

まず、期限の近い人から

指導を受けたら、次の順に進めてください。

  1. 今年度の健康診断の実施日を、拠点ごと・従業員ごとに確認します。
  2. 健診結果で異常の所見があるとされた人を抜き出します。
  3. それぞれの3か月の期限日を書き出します。
  4. 期限の近い人から順に、医師に意見を依頼します。

すでに3か月を過ぎている人がいても、そのままにせず、できるだけ早く意見を聴いてください。

依頼先の選択肢

50人未満の事業場が医師の意見を聴く方法は、主に次の4つです。

  • 本社やグループ会社の産業医:支店・営業所であれば、まず本社側の産業医に依頼できないか確認します。公的窓口も、大企業の支店などにはこの方法を案内しています。
  • 地域産業保健センター:50人未満の小規模事業場向けの無料の公的窓口です。ただし、利用には決まりがあります。たとえば兵庫県では、1事業場からの申込みは年度内2回までで、複数年にわたる継続的な支援は断る場合があるとされています。申込みが多い時期には、意見聴取の受付が一時停止された例もあります。
  • 健康診断を受けた健診機関:健診機関によっては、就業判定まで引き受けている場合があります。対応しているかどうかは、機関ごとに確認が必要です。
  • 民間の医師との契約:単発のスポット契約や、毎年の健診に合わせた年間契約で依頼する方法です。費用はかかりますが、時期や回数の制約を受けずに依頼できます。

地域産業保健センターについては、地域産業保健センターでできること・できないことで詳しく説明しています。

医師に渡すもの

医師に渡すのは、健康診断の結果(個人票)だけではありません。従業員の作業内容や労働時間も伝えてください。

同じ血圧の値でも、事務作業の人と、運転や高所での作業がある人とでは、就業上の判断が変わるからです。医師から業務に関する情報を求められた場合、事業者は速やかに提供しなければならないと定められています(労働安全衛生規則51条の2第3項)。

意見をもらった後

  1. 医師の意見を、健康診断個人票に記載します。
  2. 意見に沿って、必要な就業上の措置(作業の転換、労働時間の短縮など)を講じます(労働安全衛生法66条の5)。
  3. 措置の内容を本人に説明します。
  4. 個人票は5年間保存します(労働安全衛生規則51条)。

健康診断後の事後措置の全体像は、健康診断後の事後措置とは|医師の意見聴取から就業上の措置までで解説しています。

来年から慌てないために

意見聴取は、健康診断のたびに毎年必要になります。指導を受けて慌てて依頼先を探すのではなく、健診の時期に合わせて、依頼する医師と受け渡しの方法を先に決めておくことをお勧めします。

拠点が複数ある会社では、拠点ごとに依頼先を探すより、まとめて1つの窓口に依頼する方が手間は少なくなります。

当社では、健康診断結果の就業判定(医師の意見聴取)を、年間契約または1回ごとのスポットでお受けしています。複数の拠点もまとめて、オンラインで全国に対応します。ご依頼の詳細はこちら


執筆・監修:黒田 優(精神保健指定医・産業医・総合内科専門医・循環器専門医)。兵庫県明石市を拠点に、企業の産業医業務・メンタルヘルス支援を行っています。

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