不整脈がある従業員への就業配慮|会社が確認すべきことと産業医の役割

不整脈がある従業員への就業配慮 会社が確認すべきことと産業医の役割

「社員が不整脈と診断された。このまま今の業務を続けさせてよいのか」。人事からこの相談を受けたとき、主治医に照会して終わりになることが少なくありません。しかし主治医は病気を診ていても、その人がどんな業務に就いているかまでは知らないことが多いものです。病状と業務の両方を踏まえて就業上の意見を出せるのが産業医で、最終的な就業条件は会社が決めます。循環器専門医として、会社が確認すべきことと判断の考え方を整理します。

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不整脈は「ひとくくり」にできない

不整脈と一言で言っても、経過観察で足りるものから、失神や突然死につながり得るものまで幅があります。就業配慮を考えるうえで重要なのは病名そのものより、次の3点です。

  • 症状の有無:動悸だけなのか、めまいや失神があるのか。失神の既往は、運転・高所・単独作業の判断を大きく変えます。
  • 治療の状況:薬でコントロールされているか、カテーテル治療や植込み型デバイス(ペースメーカー・ICD)の対象か、抗凝固薬を服用しているか。
  • 業務の危険性:意識を失ったときに本人や第三者が危険にさらされる業務か(運転、高所、機械操作、単独での夜間作業など)。

この3点を組み合わせると、「そのまま就業可」「条件付きで就業可」「一時的に配置転換」のいずれかに整理できます。大半のケースは最初の二つに収まります。

会社が確認すべきこと

人事が本人に確認すべきなのは、診断名の詳細ではなく、次の事項です。本人の同意を得たうえで、必要な範囲に限って把握します。

  • 通院・服薬の状況と、主治医から仕事について指示があるか
  • 症状(動悸・めまい・失神)が業務中に起きたことがあるか
  • 現在の業務内容(運転・高所・機械・夜勤・単独作業の有無)

この情報をもとに、産業医が本人と面談し、必要に応じて主治医に勤務内容を伝えて意見を求めます。主治医への照会は、業務内容を具体的に書いて行わないと「就労可」という一般論しか返ってきません。

意見書には何を書くか

産業医の意見書は、「働けるか」ではなく「どう働けば安全か」を書く文書です。たとえば、通常の事務作業は制限なし、社用車の運転は主治医の評価が定まるまで見合わせる、夜間の単独作業は避ける、といった具合に、業務ごとに具体的に示します。あわせて、いつ見直すか(次回の受診後、3か月後など)を明記しておくと、制限が恒久化することを防げます。

過剰な制限も、放置も、会社のリスクになる

不整脈を理由に本人の希望に反して業務を外すことは、医学的根拠がなければ不利益取扱いになり得ます。逆に、失神の既往がある人に運転業務を続けさせて事故が起きれば、安全配慮義務の問題になります。どちらも、専門医の見立てに基づく文書があるかどうかで結果が変わります。判断を人事の感覚に委ねないことが、本人と会社の双方を守ります。

循環器専門医が産業医として関わる意味

不整脈の就業判定では、心電図や治療内容を自分で評価できるかどうかで、意見の精度が変わります。当社では循環器専門医である代表医師が本人と面談し、主治医とも連携して意見書を作成します。訪問を前提にしないオンライン対応のため、全国の企業様からスポットでご依頼いただけます。

よくあるご質問

不整脈があると診断された従業員は、今の仕事を続けられますか?

多くの場合、続けられます。不整脈の種類と治療状況、業務の危険性の組み合わせで判断します。失神を伴う不整脈で運転や高所作業に就いている場合など、一部の組み合わせでは配置の見直しが必要になります。

主治医の診断書に「就労可」とあれば、会社は何もしなくてよいですか?

主治医は業務内容を詳しく把握していないことが多く、「就労可」は一般的な判断であることが少なくありません。会社は業務内容に照らして安全に働けるかを産業医の意見を聴いて判断し、必要な措置を講じる責任があります。

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執筆・監修:黒田 優(精神保健指定医・産業医・総合内科専門医・循環器専門医)。17社の企業・団体の産業医として、メンタルヘルス対応から健診事後措置まで支援しています。

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