ストレスチェックの話をすると、従業員の方から必ずと言っていいほど出てくる質問があります。
「正直に答えたら、上司や人事に見られるんじゃないですか?」
この不安があると、当たり障りのない回答ばかりになり、チェックの意味がなくなってしまいます。そこで今回は、産業医の立場から、結果の取り扱いについて制度の仕組みを正確にお伝えします。
経営者や人事担当者の方には、従業員への説明資料としてもお使いいただける内容です。
結論:個人の結果は、本人の同意なく会社に渡りません
まず結論です。
ストレスチェックの回答内容や個人結果は、本人の同意がない限り、会社に提供されることはありません。これは法律で定められたルールです。
社長でも、人事部長でも、直属の上司でも同じです。「役職が上だから見られる」ということはありません。
では、誰が結果を見るのか。個人結果を取り扱えるのは、「実施者」と呼ばれる医師などの専門職と、その補助をする「実施事務従事者」に限られます。しかも、人事について権限を持つ人は実施事務従事者になれない決まりです。結果の管理は、会社の人事ラインから切り離された場所で行われる、と考えてください。
「高ストレス」と判定されたら、会社に知られる?
もう一つ多い質問がこれです。答えは、高ストレスと判定されただけでは、会社に知られることはありません。
高ストレスの判定結果は、本人だけに通知されます。会社に氏名のリストが自動的に送られる、といった仕組みはありません。
そのうえで、本人が「医師の面接指導を受けたい」と申し出た場合には、面接を設定するために必要な範囲で、会社が申出の事実を把握します。これは面接の日程調整などに必要だからで、あくまで本人の意思がスタートになります。
つまり、主導権は常に本人にあります。
面接で話したことは、どこまで会社に伝わる?
面接指導を受けた場合、医師から会社へ「就業上の意見」が伝えられることがあります。たとえば、業務量の調整や勤務時間への配慮が必要か、といった内容です。
ここで大切なのは、伝わるのは仕事の調整に必要な範囲に限られるということです。診断名や、面接で話した私生活の詳しい事情がそのまま会社に報告されるものではありません。
面接は本人を守るための仕組みであって、報告のための仕組みではない。この順番は、私たち医師の側が強く意識しているところです。
会社が受け取るのは「個人が特定されない情報」
では、会社側には何が渡るのでしょうか。主に次の2つです。
- 受検率(何人が受検したか)
- 集団分析の結果(部署や職場ごとのストレス傾向)
集団分析は、一定の人数でまとめた統計情報なので、個人を特定できない形になっています。人数が少なすぎる部署では、特定につながらないよう集計単位を工夫します。
会社はこの集団の傾向を見て、「この部署は業務負荷が高そうだ」「ここは人間関係の支援が課題かもしれない」と、職場そのものの改善を考える。これがストレスチェック制度の本来の使い方です。
正直に答えることが、自分と職場を守る
まとめます。
- 個人の回答・結果は、本人の同意なく会社に提供されない
- 高ストレス判定だけで会社に知られることはない。面接は本人の申出が起点
- 面接内容のうち会社に伝わるのは、就業上の配慮に必要な範囲のみ
- 会社が受け取るのは、個人を特定できない集団の情報
安心して正直に答えていただくことが、ご自身の健康を守る最初の一歩であり、職場をよくする材料にもなります。
そして経営者・担当者の方へ。この「結果の守られ方」を実施前にきちんと説明できるかどうかで、受検率と回答の質は大きく変わります。周知の仕方に迷われたら、その部分からお手伝いします。
よくあるご質問
高ストレスだと会社にバレますか?
バレません。個人の結果が本人の同意なく会社に渡ることはない仕組みになっています。結果の通知は実施者から本人へ直接行われます。
面接指導を申し出ると不利になりませんか?
面接指導の申出を理由として、解雇や降格などの不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。
会社はどんな情報なら受け取れるのですか?
個人が特定されない集団単位の分析結果や、実施状況などです。個人の回答内容や判定結果は含まれません。
ストレスチェックを受けないこともできますか?
受検は強制ではなく、受けないこと自体で罰則や不利益はありません。ただし自分の状態を知る機会でもあるため、正直に答えて受けることをおすすめしています。
STRESS CHECK SUPPORT
従業員に安心して受けてもらえるストレスチェックを、一緒につくりませんか。
ハートコミット合同会社では、結果をすべて社外の専門システムと医師の側で管理し、本人の同意なく会社に知らされることのない運用での実施支援を提供しています。精神保健指定医である代表医師が、実施者として、そして面接する医師として、結果の取り扱いに責任を持ちます。従業員向けの案内文も当社でご用意します。

