「主治医から1か月の休養を要するという診断書が出ました」──従業員50人未満の会社では産業医の選任義務がないため、こうした場面で相談できる医師がいないまま、経営者や総務担当者が対応を迫られるケースが少なくありません。この記事では、休職者が出てから最初の2週間にやるべきことを、順番に整理します。
まず押さえたいこと:診断書が出たら「休ませる」が原則
主治医が「休養を要する」と診断した以上、会社がそれを覆して働かせることはできません。本人が「大丈夫です」と言っても同じです。診断書を受け取ったら、原本を保管し、就業規則の休職規定(休職期間・給与の扱い・復職の手続き)を確認したうえで、休職の開始日を本人に書面で通知します。
就業規則に休職規定がない、あるいは古いままという会社も珍しくありません。その場合も「規定がないから休ませない」ではなく、まず休ませたうえで、規定の整備を並行して進めます。
最初の2週間のチェックリスト
1週目:休職の手続きと生活の保障
- 診断書の受領・保管と、休職開始日の決定・本人への通知
- 傷病手当金の案内:健康保険から給与のおよそ3分の2が支給される制度です。本人は収入への不安で治療に集中できないことが多いため、早めに申請書類を渡すことが回復への第一歩になります
- 連絡窓口の一本化:会社側の窓口を1人に決め、上司や同僚が個別に連絡しないルールにします。休職初期の頻繁な連絡は回復を妨げます
- 業務の引き継ぎは最小限に:不足があっても本人に問い合わせず、会社側で吸収するのが原則です
2週目:復職を見据えた体制づくり
- 連絡頻度のルール化:「月1回、決まった窓口からメールで近況を伺う」程度が目安です
- 復職判定の段取り確認:就業規則に「復職時は会社が指定する医師の診断を受ける」といった条項があるか確認します。条項があっても、実際に依頼できる医師がいなければ機能しません
- 相談できる医師の確保:ここが産業医のいない会社の最大の課題です。主治医は治療の専門家ですが、「仕事に戻れるか」「どんな配慮が必要か」という就業上の判断は主治医の役割の外にあり、産業医の領域です
「復職のとき」に慌てないために
休職対応で本当に難しいのは、休ませる場面ではなく戻す場面です。主治医の「復職可」の診断書だけで復職させた結果、すぐに再休職に至る例は少なくありません。主治医の診断書は「日常生活が送れる程度に回復した」ことを示すもので、「その会社のその業務に耐えられる」ことまでは保証しないためです。
復職の可否や業務内容の調整については、面談に基づいて医学的な意見を会社に伝える「復職判定面談」という仕組みがあります。詳しくは別の記事で解説しますが、休職が始まった時点で、復職時に依頼できる医師を探し始めておくと、数か月後に慌てずに済みます。
産業医がいなくても、医師には依頼できます
従業員50人未満の会社でも、休職・復職の場面に限って単発(スポット)で産業医に依頼することができます。継続契約は不要です。当社でも、休職開始時のご相談から復職判定面談・意見書の作成まで、スポットでの対応を行っています。
執筆・監修:黒田 優(精神保健指定医・産業医・内科・循環器内科専門医)。兵庫県明石市を拠点に、企業の産業医業務・メンタルヘルス支援を行っています。

